2025.01.08

おすすめ絵本

絵本「ルリユールおじさん(いせ ひでこ作)」のご紹介

絵本の紹介をさせていただくこのコーナー「友だち(えほん)の紹介」第1回目は、子どもたちが主人公のソフィーのように本が大好きで本を大切にする子になってくれればうれしいと思い、絵本「ルリユールおじさん」を紹介させていただきます。

ある日、ソフィーは大切にしていた植物図鑑がバラバラになってしまったので、本を直してくれるルリユールがいる工房へ持っていきました。ルリユールとは、製本や装幀などの作業を手作業でおこなう職人さんのことです。工房には「ルリユールおじさん」がいて、このよく読みこんだ図鑑を新しく作り直してくれることになりました。ルリユールおじさんの父もまたルリユールで、父親が丁寧に製本する姿を見て自分も父のようになりたいと思ってルリユールになったそうですから、ルリユールは代々、受け継がれているようでした。次の日、ソフィーは育てていたアカシアの芽が出たので、それをおじさんへプレゼントしたくてお店へ行きました。すると、植物図鑑はすでに出来上がっていてショーウインドゥに飾られていました。表紙は、大好きなアカシアの木になり「ソフィーの木たち」と書かれていました。ソフィーは、疲れて椅子で眠っているルリユールおじさんの横で、新しくなった植物図鑑「ソフィーの木たち」を食い入るように見ています。その姿は愛おしく、しかもソフィーは図鑑を直してもらったことをきっかけに未来もプレゼントしてもらうのです。大きくなったソフィーは、植物学の研究者になったのでした。

以前、絵本について学んでいた時に“絵本が生まれる現場”をテーマとして、絵本作家のいせひでこさんから絵本「ルリユールおじさん」の出来るまでを教えていただきました。フランスでは、本を製本・装幀するために60以上の工程があり、全てを手作業でできる製本職人は、今では一けたになってしまったそうです。いせひでこさんは、絵本「ルリユールおじさん」を作るために1か月間パリに渡り、アパートを借りて現地のルリユールの工房へ通い、構想を練ったとのことでした。

今回、この絵本を紹介したのは、杉之子の子どもたちが主人公のソフィーのように「本を大切にする子、本が大好きな子、思いやりのある子」になってほしいとの願いからでした。多くの絵本は、カバーと表紙絵はほとんど同じ絵ですが、こだわりのある作者ですと、カバー絵と表紙絵が違います。「ルリユールおじさん」のカバーは、大きなアカシアの木が描かれていますが、表紙はどのような絵が描かれているのか……。それは、ぜひご自身で手にとってご覧いただきたいと思います。

余談ですが、この絵本の原画展はフランスでも開催され、その際にお世話になったルリユールおじさんから「疲れて椅子に座っている姿は好ましくない」と言われていたために、おじさんが眠っている姿の絵は削除して、そこに描かれているソフィーがバランスよく配置されて製本されたそうです。

Suzuki

 

一覧へもどる