2025.06.19

今日のすぎのこ

第2回「親学塾」開催、汐見先生ご登壇!!

きょうは、タイトルにありますように第2回となる「親学塾」を開催しました。開催時間までの間、園庭をみていましたら、元気にあそぶお子さまたちの姿が目に留まりましたので、思わずカメラを手にしてしまいました。

この前の日曜日の雨を境にして、それ以降は真夏の陽気とともに気温の高い日が続いており、熱中症さえ心配されるほどです。

ですので、園庭でのお遊びの時間は、気温が上がる日中を避けてできるだけ午前中のはやい時間におこなうようにしています。きょうも、ランチタイムのお遊びは、園庭ではなくホールとお部屋でした。

園庭であそぶ場合は、基本的に「水遊び」が主体で、時間も10分程度としています。

なかなか十分にあそびきれない思いもありますが、お子さまたちの健康には代えられません。

しかも、いまはまだ6月です。お子さまたちのからだが暑さに慣れているかといえば、十分とは言えないでしょう。

こうして暑さを考慮しながら、今年の夏もお子さまたちの安全を第一にして乗り切っていきたいと思います。

ところで、こちらの写真の男の子、上の写真の女の子と構図が同じですが、手に持っているものが違います。男の子が手にしているのは、お花。どうやら、園舎の中にある「アンパンマン」をみつけるともらえるようです。この「アンパンマン」は、フリーの先生がセットしたもので、何か所かに分散しており、お子さまたちからすると「宝さがし」の感覚なのかもしれません。

暑くて園庭であそべない分、こうしてフリーの先生たちがいろいろと工夫して園舎内でのお遊びを充実させてくれているので、お子さまたちも新鮮な感覚で楽しめているようです。

男の子のお花の色と関係があるわけではありませんが、「だいだい色」がクラスカラーの「ひまわり組」さんにうかがってみますと、調理中の女の子に遭遇。その目線の先を追いますと……、

「ひまわりハウジング」の女子職員たちが、「段ボールハウス」の製作を進めていました。屋根までできていて、おうちのかたちになりつつあります。

理想のおうちができあがってきたからでしょうか。とてもにこやかに作業を進めていたのが印象的でした。

では、本題の「親学塾」に話を移しましょう。少し長くなりますが、お付き合いいただけましたらうれしいです。

きょうご登壇いただいたのは、NHK「すくすく子育て」などでお馴染みの汐見稔幸先生です。お話のメインテーマは、「新時代を生きていく子どもの良さを見つけてひきだそう」 、サブテーマは「子どもの主体性を養う 家ではどんなことをすればいい?」でした。

きょうのお話は、まず「AI」や「CHAT GTP」が台頭するいまの時代にあって、「果たして人は進化しているのか退化しているのか」というような切り口からスタートしました。「AI」や「CHAT GTP」によって、私たちの日常生活は、さまざまな面で便利になりました。スマホがあれば、かなりのことを調べたり済ませたりすることができ、余暇には動画をみたりゲームをしたりすることもできます。その一方で、視力は落ち、アフリカのサバンナで暮らしている狩猟民族でさえ、以前は3.0とも4.0ともいわれていた視力が、スマホの利用によって都会人並みに落ちたと言われています。

インターネットや電子メールなどを使えば、世界中につながることができますから、わざわざ現地に行く必要もありません。からだを動かさなくてもいいわけです。その結果、江戸時代に一日3040kmも歩いていたといわれる日本人の脚力は、大幅に落ちてしまいました。いま、毎日3040km歩くなんて無理ですよね。それこそ、オリンピックの競技になりそうなくらいです。

このように、世の中は人の「進化」によって生み出されたものにより便利になったようにみえますが、実は視力や体力が落ちるなどの「退化」も生じさせているのです。これって、「賢い生き方」と言えるのでしょうか。では、人間がいちばん賢かったのは、いつ頃だと思いますか?

 産業革命、それとも江戸時代の頃?

 汐見先生によれば、実は約5,000年前の人たちがいちばん賢かったのではないか、と言われているそうです。それは、なぜでしょう。その時代は、当然ながら電気やガスはありません。暖房も冷房もない中で人々は生きていました。要するに、何も「ない」時代だったわけです。この「ない」という言葉が、実はきょうのご講演での重要な「キーワード」になりました。

 何も「ない」中で、たったひとつ人間社会の中に「ある」ものといえば、それは何でしょう。それは、「知恵」です。人間は、「知恵」を使って日常生活に役立つさまざまなものをつくりだしてきました。手間ひまをかけてつくりだす、これが「文化」であり、手間ひまをかけず、例えばテレビのリモコンのように人間が楽をするのを「文明」だとすれば、この「文化」と「文明」のバランスこそが大切だと、汐見先生は仰っていました。そう考えると、冒頭に述べたスマホの過度の利用による視力の低下も、スマホをつくりだした「文化」と、それを利用する「文明」のバランスが悪化した結果とみることができます。

ここで、ちょっと話は変わります。テレビやマスコミでよく報じられていますように、日本は30年間、ほとんど給料が上がっていません。先進国の中で、日本だけが取り残されているのです。アメリカでは、「GAFA」のように世界を動かす企業が誕生していますが、日本ではそのような企業は誕生していません。それは、なぜなのでしょう。しかも、いまの日本は大企業でさえ舵取りを誤ればまたたく間に経営が悪化し、外国企業に買収されてしまうような経営環境に置かれています。何年か後には、「AI」や「CHAT GTP」にとって代わられるお仕事もあるでしょう。

そのような変化の激しい時代にあって、いま、30年後の社会を想像できる人は、居るでしょうか。そして、30年後の日本がわかったとしても、いまの教育システムで対応していけるのでしょうか。

 ここで、汐見先生のお話は、核心に触れていきます。いままでの学校は、「偏差値」重視の教育でした。「微分積分」「因数分解」「〇〇時代には△△将軍が××に幕府を開いた」などということを学び、大学まで卒業したとして、その知識は社会に出て役に立つでしょうか。

 これからの社会に出て必要とされるのは、「学力」ではなく「仕事力」です。では、「仕事力」とは何なのでしょう。それこそが、「ない」ところから生み出すちから、「知恵」なのです。それは、できあがったものを使って楽をする「文明」からうまれるのではなく、「手間ひま」をかけてつくりだす「文化」から生まれます。汐見先生は、言います。「学力」と「仕事力」は、必ずしも比例しないと……。

 「手間ひま」をかけていろいろなものをつくりだし、たくさん失敗すればいい。その過程で、お友だちと知恵を出し合い、話し合い、協力し合い、助け合う。こうして人間関係をつくりあげることもまた、未来に向かって大切なことだと汐見先生は教えてくれました。人が困っているときに助けられる人になるか、シメシメと思う人間になるか。答えは、言うまでもありません。

「手間ひま」をかけてつくりだす身近なものとしては、「お料理」がありますね。汐見先生は、親子でのお料理をすすめていました。いままでの日本の学校教育は、「正解」を教えることに主眼を置いていました。でも、これからの社会には、必ずしも「正解」は存在しないかもしれません。お料理だって、必ずしも「正解」があるわけではありません。濃いめの味、薄めの味、辛めの味、甘めの味など、味の幅は無限です。それを身近に体験できるのが「お料理」ということなのでしょう。 

「正解」という言葉とともに出てきたのが、「認知能力」と「非認知能力」です。この「非認知能力」というのは、前回の「親学塾」で内田伸子先生も触れていた大切な言葉です。「非認知能力」とは、アイデアやコミュニケーション能力など、目には見えないちからを指します。これからの教育に求められるのは、この「非認知能力」を育てることだと汐見先生も仰っていました。

「正解」は、先生が期待する答えではなく、自分の考えや思いを自信を持って伝えられることである……、これからの日本の学校教育には、このようなことが必要になるのかもしれません。そんな教育システムが未来に役立つ「人」をつくり、日本を支えていく「人」を育む……。 

汐見先生のご講演を拝聴しながら、Jimjimは、そんなふうに考えました。日本の未来は、いまの子どもたちが創っていく。そのためには、大人は何をしなければならないのか。いろいろと考えさせられることの多い「親学塾」でした。皆さんの思いは、いかがでしょうか。

汐見先生、本日は素晴らしいご講演をいただき誠にありがとうございました。途中、ユーモアも交えてのご講演でしたので、とても和やかな雰囲気に包まれてのご講演になりました。ぜひ、またご来園いただけましたらうれしいです。ご参加いただいた保護者の皆さまにも、この場を借りて心よりお礼を申し上げます。ご来園くださり、誠にありがとうございました。

 「親学塾」は、在園児の保護者の方だけではなく、他園の方や未就園の方もご参加いただけます。一緒に子育てについて学びましょう。次回の「親学塾」は、922日(月)に臨床発達心理士で神奈川県幼稚園連合会教育相談員の鈴木敦子先生を講師にお招きして開催する予定です。お申込みについては、後日、ホームページでお知らせいたします。どうぞ、よろしくお願いいたします。

というわけで、きょうの給食はこちらです。きょうは木曜日ですので、スペシャルメニューの「2段弁当」でした。

ナポリタン、鶏肉のチーズ焼き、白身魚のフライ、ブロッコリー、かぼちゃサラダ、季節のフルーツ、462kcal

ごちそうさまでした。

最後になりますが、実は汐見先生がお帰りになる前に、jimjimは自宅から持ってきた汐見先生の著書にサインをいただいたんです。「ちょっと図々しいかな……」と思いながらも、「お名前だけで結構ですから」と本をお渡ししましたところ、なんと素晴らしいお言葉を添えてくれました。そのお言葉とは……、

「学び上手こそ、生き方上手。あらゆることから、学べる人間に!!」

生きていれば、良いことも、悪いことも、悔しいことも、悲しいことも、いろいろなことがあります。そのすべてが学びの機会なのだということでしょう。知識を増やすことだけが学びではないように思います。人間の幅や奥行きを広げることもまた、学びなのではないでしょうか。

汐見先生のお言葉を、これからの人生に役立てたいと思います。

では、また明日お会いしましょう。

by jimjim

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